今回ほど、制作の為に生活リズムが狂い・それがデフォルトとなり・搬入日を見据えたスケジュールに押し潰されそうになり・なかなかキマらぬ形・キマらぬ色に精神状態が危うくなりそうな日々は無かった。
それでも何よりも間に合わぬ事、約束を違える事が怖かったので「自分はできる!」と呪いをかけまくった。
できたのだろうか?猫の形のひとつひとつがもうこれでいいよ、と言ってくれるまで気が気では無かったが、なんとか搬入日に間に合わせて、キャリーケースに入れてゴロゴロと引きずり、最寄り駅に向かったが…
信号赤で立ち止まったところで、「あれ?暗い?」と思った途端ひっくり返っていた。
あろうことか、一番大切に運ばねば!と思っていた黒雲に乗る火車猫を下敷きにして。
膝と肘をすりむき、アザを作ったがその痛みのおかげですぐ気がつけて良かったが…ギャラリーに着いて梱包を解いてみてがっくり。…破損しているではないか。
間に合わせる為に無理をしてきた結果がこれか、と愕然。しかし展示を諦めることはできない。なにしろこの日を目指してきたのだから。なんだろう、起きていることと望んでいることの相矛盾。混乱。
守ってくれたのだ、とも思った。都合の良い解釈かもしれないが、そう思って今できる最善をしよう、と半ば悲劇の半ば喜劇のヒロインめいたことを決意して、火車猫は持ち帰り…すぐ修復にかかったのだった。
火車猫は地獄からの使者であるが、悪人の死体をさらいバラバラにして、空から撒き散らしたりする妖怪である。
なぜ猫の姿なのか謎だけど、悪人を(死んでからだけど)見せしめのように痛めつけることで、密かに気持ちが救われる人々もいたのではないかなぁなどと思ったりして。理不尽な目にあっても堪え忍び沈黙している人は多い。
そんなことを考えながらだったので、妖怪と神仏の境は曖昧になった。
車を紐で背負っているが、光背にも見えてくるではないか?と悦に入った。
結果的に、一回壊れて良かったのだ…弱かった箇所は以前より強くなった!(多分)
そして縁あってとても素敵な方にお迎えして頂けることになって、またまた驚愕。
君の乗る黒雲の行方よ。自己満足かもしれないが、ドラマみたいじゃないか。
妖怪火車猫、恐るべし。
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